食への取り組み
栄養状態の良否は治療の成果に影響を与えます。食べることは人間の根源的欲求に基づく行為であり、その効果は単なる栄養補給に留まりません。当院では、心身を賦活し心身の健康をつくる“食”を大切にしています。
桜十字の「食事」
患者さまの治療において栄養状態はとても大切であり、栄養状態の改善のためには何より食べていただく必要があります。まず、食事に興味を持っていただくこと。そして「食べたい」と思っていただくこと。食べて味わい、楽しんでいただくこと。そして、食事を楽しみにしていただくこと。私たちは、患者さまに食べる喜びを感じていただけるよう、お食事作りに取り組んでまいります。
四季彩膳
四季を彩る食材を使った、普段とは少し趣を変えたお食事です。
日本を旅する故郷の味めぐり
摂食量UPを目的としてスタートしたプロジェクト。旅行で食べた懐かしい味、故郷の味、食べたことのない、違う風土の料理。メニューに興味を持ってもらい、食べる楽しみを取り戻すきっかけになればと実施しています。
四季の味
食材がいちばんおいしく栄養も豊富な「旬」に着目したメニューシリーズ。旬のものを食べることは、季節に対応した体づくりにもつながります。
患者さまの誕生日を賑やかに祝うバースデーバイキング
年に一度の患者さまのお誕生日を、スタッフも一緒にお祝いしたいという想いからスタートしました。バイキング形式でおやつを選ぶ「おやつバイキング」も兼ね、患者さまが選ぶ楽しみを感じていただける機会として、また誕生日を迎える喜びを皆で祝う場として、楽しみにしていただいています。
陶器のうつわで見た目もおいしく
美味しい食事のためには、盛り付ける器も大事。産地へ赴き、使い勝手を検討してつくったオリジナルの「砥部焼」のうつわを使用しています。
NST(栄養管理サポートチーム)
患者さまの栄養摂取の状態に対し、多職種からなるチーム医療で総合的にサポートします。当院では、低栄養の患者さまのスクリーニングと改善サポートを行う「低栄養チーム」、経管栄養から経口摂取へ移行し食べる楽しみを取り戻していただく「口から食べるプロジェクトチーム」の2チームを柱に活動を行っています。全病棟を対象としたNST回診、および全スタッフを対象とした栄養管理に関する勉強会を実施しています。
低栄養チーム
適切な治療がなされ、いくら薬が投与されたとしても、栄養状態が悪ければ病気はなかなかよくなりません。ご高齢の患者さまには、思うように栄養摂取ができないという悩みを抱えた方も少なくありません。低栄養チームでは、患者さまの円滑な治療や、低栄養による問題を予防・改善するため日々取り組んでいます。
低栄養の原因
- 病気の影響や苦痛からくる鬱やストレス
- 薬の影響
- 義歯が合っていない
- 嚥下がうまくできない など
低栄養の影響
食事ができないと、体の機能はどんどん低下していきます。たとえば、何らかの原因で食事ができない状態になると、8時間で腸の絨毛という栄養を吸収する器官が萎縮していきます。腸の中にもともと存在する細菌や毒素が体のなかに侵入しやすくなり、感染症にかかりやすくなります。発熱しやすくなり、ひどいときには敗血症になったりします。そのほか肺炎など合併症が生じやすくなります。また、痩せて骨折しやすくなったり、痛みを生じたり、皮膚がウロコ状にはがれてきたりと、その悪影響は枚挙に暇がありません。一般的に、高齢で入院される患者さまの40~60%が、すでに栄養摂取に問題を抱えていると言われています。
NST実施の流れ
1入院時に栄養状態の改善が必要な患者さまを把握する
患者さま入院時に問診・スクリーニングを行ないます。
2NST委員会に「NST回診依頼書」が提出される
栄養状態が不良の方、高リスクの方であれば、NSTの介入を依頼します。
3栄養療法計画の立案・実施
担当医とNSTが患者さまの栄養療法計画を立案、実施いたします。
4経過の管理・評価・さらなる改善へ
3週に1回の栄養回診・カンファレンスを通して継続的にサポートします。
スクリーニング方法
- 採血によるリンパ球数、アルブミン値などの評価
- 食事摂取量はどうか
- 合併疾患の有無、状態
- 体重(BMI・体重減少率)の評価
- 消化器症状(下痢・嘔吐など)の有無
- 浮腫、褥瘡はあるか
- 皮膚の状態はどうか(うろこ状皮膚・パラフィン紙状皮膚になっていないか)
- 嚥下に問題があるかどうか
その他の活動
お茶ゼリー[管理栄養士]
目的水分補給/脱水症状予防
患者さまの疾患に合わせて必要水分量を算出し、不足分を水・お茶などで補います。摂取しやすい形を追求して、お茶ゼリーにたどりつきました。病棟の冷蔵庫に常備して、できる限り水分を補っていただくようにしています。
緑茶棒口腔ケア[言語聴覚士]
目的口内環境の清浄を保つ
唾液の分泌が不十分な状態が続くと、口内細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や感染症の原因となります。これを防ぐため、緑茶を医療用めん棒に浸して冷凍した“緑茶棒”を作って、口腔ケアを行っています。カテキンの抗菌作用のほか、緑茶の清涼感で心地よく舌苔を除去します。
経腸栄養のとろみ化・半固形化[管理栄養士]
目的嘔吐や下痢、瘻孔からの漏れ等の予防・軽減、注入時間の短縮
経腸栄養剤にとろみをつけた(または半固形化した)栄養剤は、消化吸収が口から食べた時に近い状態になるため、嘔吐や下痢、瘻孔からの漏れ等の予防・軽減などのメリットがあります。また、注入時間が短縮されるため、患者さまの負担も軽減され、リハビリ等の時間確保や褥瘡予防にも繋がります。
嚥下検査[医師]
目的飲み込みの状態を確認・評価し、食事内容の検討材料とする
- VF(嚥下造影)検査
- 造影剤を使って、食べ物がどのように咀嚼されて飲み込まれていくかを確認できる検査です。この検査によって、どこに障害があるかを確認したり、この結果によって食べ物の形態等を決めています。
- VE(嚥下内視鏡)検査
- 鼻から咽喉まで内視鏡を入れ、飲み込みの状態や残留物の様子などを直接観察します。ベッドの上でも検査ができます。この検査によって食べやすい食べ物の形態等を検討します。